秋の雨は 降りしきる
鳴くや 虫の音 この夜長
秋の夜の 風白き
雲も流れて 見えぬ月
過ぎし萩が枝 つゆしづく
持ちゆく傘に 雨音ゆすれ
香りの調べ 金木犀
誰が袖ふれし 瑞(みづ)の香ぞ
風の息吹きに くゆらせて
いざや 今宵の 語りを聞かむ
小さき花は 道に散り
黄金(こがね)華やぐ その上に
静かに 透(とお)れ 雨の糸
見えぬ月の音(ね) 雲の波
木の影すかす 夜の灯に
何故か しみいる かなしみを
重穂(おもほ)に出でる 花すすき
秋の雨は 降りしきる
いよいよ虫の音 あはれなり
秋の雨は 降りしきる――