いにしえの はるけき 天雲(あめぐも)に舞うたか、
青鈍色(あおにびいろ)の 風切羽。
刃紋は 雲の形をうつして流れ、
刃先は いかづちの光をうつして ひるがえり――
いまは 羽を休める鳥のように、
しずかに 台(うてな)の上に眠れるもの。
内に秘めし玉鋼(たまはがね)が見るのは、
いにしえの蹈鞴(たたら)の夢か、
それとも おのれの選(え)り抜いた
刀匠(たくみ)の、あるいは武士(もののふ)の記憶。
一ツ目の姿せし鉄の神は
……黙(もく)して語らず……
熱く燃える火焔の闇より引き出され、
冷たく凍れる姿は、
いとも くすしく 水をまとい。
荒れ狂う いにしえの夢に
心をかき乱すは 誰(た)ぞ。
あやしくも 神さびたる巨きな禍ツ霊(マガツヒ)が、
たしかに いきづき、渦巻いている……
青鈍色の 風切羽。
刀身、遠き天雲の生き物よ――