《敷島の道・考》
あらゆる人間の能力のうち、美の創造に最も深く関わるもの――霊感とは、何でしょうか。
その問いに答えようとすることは、芸術の誕生の謎を解く事でもあると思うのです。
――人は芸術に如何なるものを求め、如何なるものに挑んできたのでしょうか。
それは、無限の調和を求めるが故の、直観力と感受性の勝負ではなかったか――と思うのです。
無限の調和――それは別の言葉で言えば、神々の存在を証しする事でもあるかも知れません。
大自然の必然なる調和――それは、先人が地道に伝承してきた「人間性」なるものの、最も美しい調和でもあるのです。
人間性なるものの、その最も人間性なるもの――直観力、感受性、構成力――
それこそが、霊感(インスピレーション)の正体です。
これは絵を描く時も、音楽を奏でるときも、詩歌を作るときも、共通するものではないかと思います。
いにしえの日本人は、その《無限》の調和に至る道を
「敷島の道」と言い、とても重要視していました。
「敷島の道」――目には見えないけれど確かにそこにある、
必然的な軌道――それは、《無限》の流れが織り成す軌道でもあります。
日本においては、心して言葉を用いる「和歌」というものを通じて、
その《無限の調べ》を描き出そうとしてきたのです。
天われを殺さずして詩を作らしむ
われ生きて詩を作らむ
われみづからのまことなる詩を――(山頭火)
雪かぎりなしぬかづけば雪ふりしきる――(山頭火)
――以上これらの小考は、『「無限」の詩学』
及び『古代の詩と世界の謎』という、
二つの論文の影響を受けています。
また詩歌制作活動「葉影和歌集」においても、これらの論文に大いに刺激を受けています。