深森の帝國§総目次 §物語ノ本流 〉第二部.第七章(頁.1)

第二部 第七章 頁.1.夕方の縁先

頁.1 〉頁.2-3頁.4-5頁.6-7頁.8-9頁.10-11頁.12-13頁.14-15頁.16-17頁.18-19頁.20-21頁.22-23頁.24-25頁.26-27頁.28-29頁.30-31頁.32-33頁.34-35頁.36-37頁.38-39頁.40-41頁.42-43頁.44-45頁.46-47頁.48-49頁.50-51頁.52-53頁.54-55頁.56-57頁.58-59頁.60目次に戻る

月こそ物の矛盾なれ。ぬばたまの闇夜を照らせど太陰と言ふ。 一には月の面を見る事を戒めると云ひ、別の一には名月を見る事を良しと云ふ――『照泉鏡』

8月15日の夕方である。カモ邸の一室で、澄江御前は改めて文書に目を通し、憂いに眉をひそめていた。 「鳩屋敷主催の観月宴とは言え、 招待客の一覧を見てみると…殆ど女院派の有力者たちで…まるで敵陣に乗り込むような物じゃ無い」

その澄江御前のボヤキを耳にした、カモ邸の家令(執事)の妻である谷夫人が振り返り、 「でも、綾敷さまが居られますでしょう」と、にこやかに応じた。

澄江御前は改めて顔を引き締めると、まるで超能力者か何かのように、縁先に視線を向けた。 そこには、カモ夫妻の義理の息子・辰巳が控えていたのである。

澄江御前はいつものように、「辰巳さん、あの人をシッカリ見張ってて頂戴ね…全く、 目を離すと、いつも変な事に足を突っ込んでいるんだから…」と、 ハイタカに注文を付けた。流石に澄江御前は正確な所は理解していないのだが、 カモさんの片腕としてのハイタカの能力には、全幅の信頼を置いていたのである。

その口調が、いつものようにお小言そのものだった事に気付いたハイタカは、 「承知…」と応じながらも、ひそかに吹き出し笑いをしていたのであった。


§総目次§
物語ノ岸辺物語ノ本流物語ノ時空物語ノ拾遺