深森の帝國§総目次 §物語ノ本流 〉第二部.第六章(頁.44)

第二部 第六章 頁.44.ひそかに同期した、或る異変

頁.1頁.2-3頁.4-5頁.6-7頁.8-9頁.10-11頁.12-13頁.14-15頁.16-17頁.18-19頁.20-21頁.22-23頁.24-25頁.26-27頁.28-29頁.30-31頁.32-33頁.34-35頁.36-37頁.38-39頁.40-41頁.42-43 〉頁.44 》目次に戻る

時をさかのぼり、道成寺の怪異と同時の頃――実は伊勢の斎宮でも、或る予兆があったのである。

巨大台風の影響は、伊勢へも及んでいた。激しい風雨に翻弄される斎宮である――そして、 何ともドジな事に、柚羅と瀬都は、坂崎家に割り当てられていた棟の、 雨戸の一つを閉め忘れていたのである。

強烈な風雨にあおられ、大きくめくれ上がる御簾。柚羅と瀬都が驚き慌てている間に、 その強い風は、部屋に広げられていた諸々を吹き飛ばした。 雨戸を優先すべきなのであるが、パニックの余り、柚羅と瀬都は、 「紙が!筆が!墨が!」などと悲鳴を上げるばかりであった。

柚羅の兄であるシッカリ者の尚通も、流石に慌てていた。 「こら!また朱墨の蓋を開けたまま…こぼれたじゃ無いか!」と指摘する。 「ああ…もう!国土地図が…!」

ようやくの事で雨戸を閉め、吹き飛ばされた数々を元の位置に戻し――

尚通が確保した国土地図は、朱墨が散らばって、 既に使い物にならない状態であった。「風にあおられて、地図の端っこまでやられちゃったよ…見ろ! お蔭で雨竜島、朱墨で完全に見えなくなってるじゃ無いか!」

しかし、この『偶然』の出来事と、その意味を、カモさんが知るまでには――余程の時間を必要としたのである。


§総目次§
物語ノ岸辺物語ノ本流物語ノ時空物語ノ拾遺