深森の帝國§総目次 §物語ノ本流 〉第二部.第四章(頁.1)

第二部 第四章 頁.1.庭先の会話

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熊野は隠りくの国と云へり。熊野道は、いと古き神々の道、古来より火と水の祭祀絶えず。 紀伊の国、道行けば、空青し、山青し、海青し。――『照泉鏡(てるみかがみ)』

快晴の中、洗濯物が次々に乾いて行く。鏡は乾いた衣服を取り込んでいたが、ふと人の気配を感じて振り向くと、 後ろにある背の低い柵から、二つの目がのぞいているのが分かった。 「…あれ?こんにちは、瀬都ちゃん」と呼び掛ける鏡である。

瀬都は、おずおずと出て来た。「何か?」と尋ねる鏡。 瀬都は暫し口ごもっていたが、やがて、 「鏡さんは、おじさまと、どうやってお知り合いになったのかなと思っていて…」と、 奇妙な質問を寄越して来たのであった。

鏡の中に、明敏な洞察力が閃いた。鏡は淡い驚きを感じながらも、少女を無言で見つめるのみであった。

ああ…この子は、寂しいのだ。カモさんが間も無く旅に出る事を、何故か知ってしまっている―― その気持ちを直接に口には出せずに、このような奇妙な質問に代えて来たのだ――


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