深森の帝國§総目次 §物語ノ本流 〉第一部 第一章(頁.26-27)

第一部 第一章 頁.26-27.明け方の鳥辺野の森にて

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カモさんと鏡が村の境に差し掛かる頃――境界を成す森の中から、不思議な歌声が流れていた。

「歌?」怪訝そうな鏡。「静かにな」と声を掛け、耳を澄ますカモさん。「やはり鳥辺野だな」と、 カモさんはうなづき、鏡を村の境界の方へといざなった。 「あれはシノビゴト(死者を悼む歌)だ…野辺送りをしている…」

二人は、朝の早い人々が行き交っている街道を外れて、森の中に足を踏み入れた…そこは前日の夕方、 少女が埋葬された鳥辺野の森である。

鳥辺野の森の中を、霊魂か何かのように飛び交う蝶…「薄羽白蝶(ウスバシロチョウ)」。 初夏に見かける種で、羽根は透けて見えるほど薄く、繊細な雰囲気を持った蝶である。 森の中には、杖を持つヤツマタ。死んだ少女に歌を捧げていた。

――鳥辺野を-飛び交ふ蝶の-白きかな-朝散る露の-命なりけむ――

――根に帰り-スクに行くも-白蝶の-風のみ到る-雲の八重波――


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