深森の帝國§総目次 §物語ノ本流 〉第一部 第一章(頁.24-25)

第一部 第一章 頁.24-25.十六夜…そして翌朝

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カモさんは、神々と亡霊の話に混乱している鏡を見やり、「別に今更珍しい事でも無い」と語った。

「此処は神々のさすらいの地だ…大陸の最果てから見た事の無い神々が流れてくる… ヘレスの新しい神アテナに追われたと云う古い神メドゥサ…あれは、 今でも語り草でのう…二千年、三千年も昔の話であるが…」カモさんは遥か昔を思い出すかのように、遠い目をしている…

千年の時空を超える話…「三千年?」目くるめく思いの鏡に、カモさんはわずかに笑みを浮かべて見せた。 「…さ、若いの、明日は早い」と、宿坊の方へと鏡を促した。

神々のさすらい――鏡はカモさんの後姿を眺めつつ、暫しの物思いに沈んだ。カモさんは何者なのだろう?この人も、 大陸の何処か…遥か西の果てから流れ着いた神々の末裔…流亡の民の子孫なのか――寝床に入ってからも、 鏡の物思いは彼方此方を流離った。西の大陸の、更に西…話に聞く西域は草原と荒野の世界…オアシスが点在し、 そこでは諸王国が栄えると云う――

最後の部屋の灯りが消え、十六夜の月が空を横切ってゆく深夜。月光に浮かび上がる葉影の中、 異形の杖を携えた人影が現れる…その人物の目は、十六夜の月をじっと見上げていた。

(和歌)ゆくりなくあくがれいでし十六夜の月やおくれぬかたみなるべき――『十六夜日記』阿仏尼

――風の吹きすさぶ翌朝。宿を取っていた旅人たちは次々に出立する。「朝から風が吹くね」と声をかける旅人。 宿屋の従業員も挨拶を返す。「おはようございます…道中はどうぞお気をつけて」


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