深森の帝國§総目次 §物語ノ本流 〉第一部 第一章(頁.20-21)

第一部 第一章 頁.20-21.十六夜の書状

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しっかりした門構え、複数の棟を持つ質素ながらきちんとした感じの宿坊――門に灯りが取り付けられており、 小僧のなりをした人物が門をくぐって来た。手ごろな棟の縁側で小僧は、鏡の名を連呼し始めた。 食事中の宿泊客が対応。「新入りかな?湯に入ってるよ」

小僧は暫くして、鏡を探し当てた。「鏡さんですか?」…戸惑いながらも、「はい」と答える鏡である。 「書状が来てますよ」と手紙を渡すと、小僧は門の外へ素早く消えて行った。 その書状は、ユカルから鏡宛のものであった――

(手紙の内容)鏡、済まない。今日の事は親には言わないでくれ、心配させてしまうから ――親友のお前なら分かってくれると思う。あの背の曲がった女の子(の事)… あれは本当にオレのせいじゃなくて、悪魔があの時入り込んでいたせいなのだ――
――聖麻(ショウマ)王家・ユカル

書面の内容にショックを受けて、落ち込む鏡。(身体の震えが止まらない…何故だ?)

そんな鏡に、カモさんは声をかけた。「…それは、友人かね?」 ある程度、書面の内容を予測していたような雰囲気である。やがてカモさんは、風呂敷包みを取り出した。 「ほれ、脚半だの草鞋だの…夕市で買うてきた」…怪訝そうな鏡を見て、さらに言葉を継ぐ。「…山越えに必要だ…」

背景、山脈にかかる十六夜の月。しばしの沈黙――「鏡さんは、必ず鈴鹿越えをすると思っていたよ」

「何故?」と問う鏡に、「さあな…」と、とぼけてみせるカモさん。 鏡はしばらく戸惑っていたが、やがて思い切ったように語り出した。「学友でした…あの人…ユカルは」


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