深森の帝國§総目次 §物語ノ本流 〉第一部 第一章(頁.18-19)

第一部 第一章 頁.18-19.暮れなずむ鳥辺野の森にて…アザミとの遭遇

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カモさんは鏡を連れて、村の境界の鳥辺野に入った。

暗い木立の中に、魔除けのための注連縄が張られている――「道」と言えるかどうかも覚束ない茂みを行くと、 目の先に、小柄な覆面人物が見えてきた。笠をかぶり、ヤツマタの杖を携えていた…覆面からのぞく、切れ長の目。

「ヤツマタか…」と確認するカモさん。覆面の小柄な人物は、「ハイ」とうなづいた。

「手が出ている…」というカモさんの声に引かれて地面を見た鏡は、 埋葬された少女の死体の手が土の中から突き出しているのを見て、ギョッとした。 覆面のヤツマタは切れ長の深い目をきらめかせ、 静かな声でつぶやいた…「逢魔が時です…魔が近くて、深い穴は掘れなかったのです」

カモさんは少女の墓の前にしゃがみ、心ばかりの魔除けの印を切った。 「魂送りは明日だな」…地面から突き出した少女の手。そして、傍には、不思議な羽根が一枚。 ハッと息を呑むカモさんであった。カモさんは、覆面の小柄な人物を見上げ、やがて納得したような口調で、 「御身、アザミ衆か…」と語り掛けたのであった。

“アザミ”――謎めいた言葉である。この、覆面の小柄なヤツマタは、アザミと言うのか? ――疑問を抱え始めた鏡の後ろでは、夕闇が急速にせまり、星が瞬き出していた…


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