深森の帝國§総目次 §物語ノ本流 〉第一部 第一章(頁.12-13)

第一部 第一章 頁.12-13.辻占の少女、境内にあらわれる…そして、事件発生

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神社の境内には相当数の参拝人が行き交っていた。何処からか、辻占の声。

辻や辻 四辻が占の 市四辻 占まさしかれ 辻占の神/百辻や 四辻が中の 一の辻 占まさしかれ 辻占の神

「ああ…夕占だ」鏡は、辻占の少女に気付いた。俗にセムシと言われる異形の少女。年のころは七歳ぐらい。 丈の長いマントで曲がった背を隠していた。ユカルは「頃合だな…引き返せって卦が出ると思うな」と軽く突っ込んだ。

鏡は、辻占の少女を呼び止めた。少女は料金を受け取り、「辻占召しませ」と籤を差し出した。 「出会い旅立ち…時は良し」――鏡は、自分の決心に自信が付いた様子で、近くの枝に籤を結び始めた。

鏡の姿を眺めていたユカルは、ふいに嫉妬と焦りに襲われた。こいつは今、 飛び立とうとしているのだ…オレが怖気ているうちに…ユカルは苛立ったように、 「迷信だ、迷信!」と囃した。自慢の夕占を疑われた形になった少女は、 むきになって「鈴鹿の神は、ようけ当ります!」と反論し、ユカルの袖をつかんだ。

袖を引かれたユカルは思わず、少女を振り払う…少女はよろめき、運悪く階段の段差で足を滑らせた。 階段の上からまっさかさまに落ちる少女…鏡とユカルは凍りつき、その光景を呆然として眺めるのみであった。


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