深森の帝國§総目次 §物語ノ本流 〉第一部 第一章(頁.6-7)

第一部 第一章 頁.6-7.白い幻とは…そして、青年の経緯など

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カモさんは山を指差してみせた。「鏡さんが見たものは山の向こうへ消えたであろう?」 うなづく鏡。カモさんは続けて、白い幻の正体を解説した。 「妖霊星、天狐(アマツキツネ)だ…花洛より古く大陸から渡り来た神で、 彼の地ではセトとも云うが…東国諸国では三狐(ミケツ)と呼ばれる」

カモさんは何かしら思い当たる節があったのか、奇妙な問いを重ねた。 「鏡さんは金目衆(カナメしゅう)の出かね?」

理解できない言葉を聞き、戸惑う鏡。「何ですか、そのカナメって…私は…」 鏡は暫く息を呑んでいたが、自らの経緯を説明しようとして、我が身の背景に思い至った。 (私の母は…)口に出して言いそうになったが、途中で言葉がつかえてしまう。

「ああ…何ぞ事情のあるご様子で」と無欲庵。「…花洛人にしては、草のにおいがございますよ…鏡さんは」

《草》…「青人草」。現(ウツ)しき青人草――華にはなれぬ、星にもなれぬ――この国の底なす我らは、 ただ緑なす草なりき――何処かで聞いた事のあるような、古い言葉。

沈黙に落ちた鏡を見やりつつ、カモさんは深い息をついた。 「鏡…さん、か、…名は体を表すってヤツだな…図らずも、この現し世の幾多の実相を映し出す…」

カモさんは、やがて気を取り直し、「ところで、鏡さんは旅をしていて…何処へゆきなさる?」と確認の問いを重ねた。

旅の目的を問われた鏡は、昨夜のアヤカシとの出会いを語る。老婆の妖怪変化――そして、 “オウショウクン…ヨドミに会うがよい…”という、謎の言葉。 次第に不安が湧き上がる鏡。「桜照君は、実在する人物なのですか?ヨドミとはいったい…?」


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